店づくりにおいて与えられた敷地を変えることは不可能であり、その敷地においてコンテクストを読み込み、

逆にその魅力を引き出すことがデザイナーに求められた使命である。

 

東京有数の飲食店激戦区である恵比寿。1階の新築物件でありながら間口が1間(1.8m)ほどしかなかったこの物件は、

その活かし方を示すことができず借り手がすぐにはつかなかった。

 

1間ほどしかないファサードの中で体感的な和の要素を表現して欲しい。

クライアントからの要望に対してイメージしたのは京都の祇園や先斗町で見る小路の存在。

小さな門構えをくぐった小路の先に見える店は小路がバッファーとなることで、ゲストの期待値を高める装置となっている。

 

また、和風建築の特徴として水平屋根とそれを支える細い柱がある。

今回はスチール製の薄い水平屋根と間接照明を仕込んだ丸太柱において、和の特徴を現代的に且つ情緒的に表現することを試みた。

間接照明によって浮かび上がった丸太柱の自然的なフォルムがアイキャッチとなりゲストを向かい入れる。

 

その門を超えた先にソファ席を配した小路が延び、ソムリエが立つカウンターに辿りつくそのアプローチを

バッファーとして捉えたことで、間口が1間しかないネガティブだった敷地はポジティブな魅力を宿し、

それがこの店を他のレストランとは異なる『恵比寿アッカ』にしかない魅力を持った空間となるのである。


Location:Ebisu,Tokyo

Date:2019,June

URL:https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13235457/