借景を取り込む。
オーナーは長年フィレンツェの名店『Borgo San Jacopo』にてスーシェフを歴任され、14年ぶりに日本に帰国された際に設計の依頼をいただきました。
『イタリアで通ったトラットリアのように、ゲストがテーブルを囲んで賑やかに食事をする風景をつくりたい。』
オーナーが不意に呟いた言葉の向こう側に、僕は日本の多くのイタリア料理店ではなかなか感じることができない本当のイタリアの風景が垣間見えた気がした。
敷地は錦糸町駅の北口公園に面し、緑豊かな光景が広がるガラス張りの物件でした。
イタリアでも日本でも植物と空の景色は変わらない。赤煉瓦でつくったR型の梁と真っ赤なベンチシートでフレーミングすることで、
通行人や車などの余計な景色を隠し、目の前に広がる緑と空を借景としてインテリアに引き込むことを試みた。
それによりアンティークドアや古材など、既に人の手の記憶が残る味わいを持ったマテリアルがより一層説得力を増し、
まるで本当にイタリアにいるような空気感を持つようになった。
そんな空間で食すオーナーの料理や注がれるイタリアワインには、いつか誰かが訪れたイタリアの記憶が蘇ります。
そしてオープンしてから3年後の2018年以後は継続してミシュランガイドに掲載される名店となっています。